六本松キャンパスの植物たち 草本類リスト写真・解説 |
草本類リスト写真・解説 オグルマ |
オグルマ(キク科) 注:ここに掲載した植物はオグルマではない可能性があります(ヨウシュオグルマなど外来のものかもしれません)。ページは残しておきますが、このページを他所のオグルマを同定するなどのために参考にすることはおすすめできませんのでご注意ください。2013年9月記 ![]() オグルマは2010年秋に跡地内の植物調査をしていて偶然発見した草です。 ![]() ![]() 福岡県のレッドデータブックで「情報不足」のカテゴリーに分類されています。これは、福岡県内における絶滅のおそれの程度を判断するための情報が不足しているということを意味します。つまり、生育情報自体がたいへん少ないということになります。 私もいくらか調べましたが、いまのところ、平尾台に生息しているというネット上の情報しかわかりません。 この草については同定が困難であったこともあり、今後の資料となるよう少し細かい写真を掲載します。 生育地点はキャンパス本館入り口正面に向かって右側(正面西側)の植樹帯、外来車の駐車場に接しているコンクリート縁石の隙間です。この隙間に数メートルにわたって直線的に約60個体が分布していました。個体数は根出葉もしくは隙間から生え出ている茎の数を数えました。 ![]() ![]() 発見時にすでにかなり傷んでいるようすがありました。一部には茎が折られている様子もありました。おそらく夏頃から開花していたのであろうと思われます。 同定は『フィールド版 日本の野生植物』(平凡社)の検索表を用いました。 頭花は中心部の筒状花と縁部の舌状花からなり、舌状花は2唇形ではないです。 ![]() ![]() ↑総苞片は多列です。 ![]() ↑葯の下部は尾状です(ここまででキク科キク亜科オグルマ属)。 ここからが少し難しいのですが、根出葉は開花時に枯れているものがほとんどでした。ただ、縁石の隙間から茎が出ていることもあり、どの葉がどの茎の根出葉なのか判断の難しいものが多かったです(ロゼットしかない個体が多数でした)。↓ ![]() ![]() ↑痩果(たね)は有毛です。根出葉のチェックポイントをクリアしたと考えれば、この時点でオグルマであろうと考えられます。 一般にはオグルマと「カセンソウ」とを見分けるために、葉の裏側の葉脈を見るとされています。葉脈が凸出していて葉が洋紙質であるとカセンソウ、葉脈が特に凸出せず、葉が柔らかいとオグルマとの記載が検索表にありますが、残念ながらカセンソウの生体を私は知りませんので比較ができません。 ![]() ![]() ただ、益村 聖(著)『絵合わせ 九州の花図鑑』(海鳥社)によると、カセンソウの葉の裏は「細かい所まで浮き上がって、はっきりと見える」のがオグルマとの区別点とされています。見たところそのようではありません。 このようにして、おそらくオグルマであろうと判断しました。 なお、知り合いの植物の専門家の方にオグルマとカセンソウの全体標本を持ってきていただき、現地で生体を標本と照合したところ、花弁の先端の形状がオグルマ標本のほうにより類似していて、その方との合議で最終的にオグルマと同定しました。 残念ながらこの生育地点の植樹帯は跡地の建物等除却工事の際に解体される予定であると告知されていて、現状が不明です。 オグルマについては、個体標本(地上部のみ)と種子(痩果)を採取しました。縁石の隙間からロゼットが多数出ていたことから考えて、同じような条件を再現できればそこに播種して小群落を再生させることもできなくはないと思われます。 同地は他にも在来種草本が多種生育していた植樹帯で、一部が表土移植対象区画になっています。現地には現在(2011年1月時点)ケヤキが移植待ちの状態で、当初の土壌がいくらか残っている可能性もあると思われます。 表土移植区画とあわせて、今後の土地利用においてオグルマを含めた在来種草本の再生をはかっていただきたいと願っています。 2010年9月4日・5日・19日撮影 |
(掲載:2011年2月4日) |