中庭の桜  


 

--六本松キャンパスの植物たち--

2009年3月制作開始 ★ 2019年3月現在ここへの移転作業中
 九州大学 旧・六本松キャンパスの植物を記録するサイトです。
 六本松キャンパスは2009年に移転のため閉鎖されましたが、当時キャンパス跡地には都市部では珍しい植物や、九大関係者・地域の方々から親しまれた植物がそのまま残されていました。キャンパス移転当時九州大学大学院に在籍していた私は、生物に関心を持つ在学生と協力して、キャンパス内の植物を調べ、関係する方々に向けてそれらの植物に関する情報提供を始め、お話を交わす機会を頂戴しました。そうした中でいろいろな方々から伺ったキャンパス植物への思いを受け、キャンパスの植物を残して跡地利用で「活用」する検討をしていただけるよう申し入れもさせていただきました。当時すでに、跡地の緑を残したいという地域の方々の声や取り組みがあり、その地域の方々の御努力、各方面の方々による御尽力の結果、各種の樹木と草本類(草花)が引き続き跡地に残されることになりました。
 跡地ではまず建物解体・基盤整備工事が行われ、その過程で樹木・草本の現地保全・仮移植・敷地内再移植が行われました。その後、建設工事が始まり、公園・マンション・商業施設などが完成して、いま跡地は新しい姿を見せています。残された旧キャンパス時代の植物は、現在(2017年9月時点)、跡地に新設されている六本松公園と、跡地の北側2つの角地や六本松公園北側などの公開緑地で見ることができます。また外周の目下工事が進められている部分などに以前からの植物が残されています。
 他方で、数多くの植物が失われもしました。このサイトでは六本松キャンパスで生きてきた植物を、残されたもの・失われたものともどもなるべく幅広く記録し掲載していきたいと思います。六本松跡地にかぎらず、六本松など近隣地域・まちなかの植物について考えるための参考にしていただければ幸いです。
 
 跡地に生きていた植物についての簡単な紹介、そして跡地植物のその後と現況の概略をこのページの下方に載せています。一部の植物については、六本松植物ブログにくわしい紹介や折々の様子を載せています。ブログは現在もときどき更新しています。このページとあわせてごらんください。
 
光安輝高
(元 九州大学大学院人間環境学府都市共生デザイン専攻 大学院生)
★ 現連絡先はこのページのいちばん下にあります


 


 
カンサイタンポポ
カンサイタンポポ(2009年)
イヌノフグリ
イヌノフグリ(2009年)

跡地植物の簡単な紹介


 六本松キャンパスには、自生・植栽のさまざまな植物が数多く生きていました。
 以下は、工事が始まる以前の時点(2009年12月時点)で生育していた主な植物の紹介です。現在ではすでに伐採された樹木や見られなくなった草花も含まれています。
※ 跡地植物の現況についてはここの下のキャンパス植物のその後と現況についてをごらんください。
※ 文中のリンクは、六本松キャンパスの植物ブログ内の記事、もしくは草本類リストの解説ページへ移動します。ブログ記事は他の種の植物とあわせて取り上げているものもあります。ブログ記事からここのページに戻るにはブラウザの「戻る」ボタンをお使いください。
 
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 キャンパス内には、環境省・福岡県のレッドデータブックに絶滅危惧植物として記載されているイヌノフグリ(環境省:絶滅危惧II類、福岡県:絶滅危惧IB類)、福岡の在来種であるカンサイタンポポシロバナタンポポ、林縁に見られるシラスゲ・ナキリスゲ・ツルボ等、都市部では希少な草本類が自生していました。スミレ・ノギク・ススキ・フキ・トウバナ・ヒメウズ・キツネノマゴイヌコウジュスズメノヒエ等野趣のある草花も見られました。
 
 植栽された植物としては、(ソメイヨシノ・ヤマザクラ・サトザクラ)・ケヤキ・クスノキ・イチョウ・クロマツ・ワシントンパーム等の大木・古木、ツバキ・サザンカ・ロウバイ・アンズ・コブシ・タニウツギハナミズキ・ハナズオウ・アジサイ・ザクロ・海紅豆(アメリカデイゴ)・キンモクセイ等の園芸樹木、さらにトウカエデ・クロガネモチ・イヌマキ・アラカシ・マテバシイ・ヤマモモ・クワ・モチノキ・ニッケイ・ツガ等さまざまな木がありました。
 
 正門近くにはワシントンパームが3本あり、キャンパスのシンボルでした。旧鳥飼村役場から移植されたと伝わるソテツの大木もありました。本館南の中庭には枝振りの見事なが2本あり、学生や教職員に親しまれていました。「六本松」にちなんだのか松の大木もありました。1号館南には古木のキンモクセイ2本とケヤキ並木があり、西側プール横にも大きな桜がありました。亭々舎周辺には各種の針葉樹がありました。外周部を中心にスモモ・ビワ・クルミ・カキノキ・グミ等の果樹もありました。特に外周部の木については、学生や近隣の方が花や実を見て楽しんだり収穫したりしていたという話を多く伺いました。敷地外縁にはスイセン・コスモス等の花も植えられていて、またご近所の方々が花あざやかな園芸植物をいろいろ植えていらっしゃいました。
 
 さらに、クヌギ・オガタマノキ・ギョボク・ハルニレ・タイリンアオイ・ウマノスズクサ・ホタルブクロ等、研究用(チョウの餌等)の植物が敷地の北東部に植えられていて、ちょっとした雑木林を成していました。夏にはチョウや甲虫類(クワガタ等)が見られ、冬場にはシロハラ・ウグイス・メジロ・ジョウビタキ等の鳥が見られました。
 
 これらの植物たちは、それ自体が貴重な命であり、まちなかの自然としても価値あるものでした。九大の学生・教員・職員など大学関係者にとって思い出のある植物もあり、地域の方々に親しまれてきた植物もありました。
 
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さくら 中庭の桜(2009年)
 


 
カンサイタンポポの花 六本松公園のカンサイタンポポ(2016年)
 

キャンパス植物のその後と現況について


(この項目は2017年9月に掲載しました。暫定版で、書いている内容はおおよそ2016年春の時点でのことですが、それ以降のことも加えています。その後の状況変化などをあわせてこれから編集していきます)
 2009年のキャンパス閉鎖後しばらく植物はそのまま残されていましたが、2010年と2013年の工事で多くの樹木の伐採が行われました(当時のURの工事説明会資料によると総数の半数強にあたる288本、以下本数は同資料によるものです)。ギョボク等一部の樹木は九州大学伊都キャンパスに移植されました。中庭の桜は伐採前に挿し芽が採取され、苗として育成されました。
 一方、移植可能と判定された樹木は、跡地内に設けられた仮移植地に移されるなどした後、跡地外周部・公園予定地(現在の六本松公園)・公園北側の公開緑地予定地(現在のMJR南側公開緑地)に再移植されました。本館北側や外周部等のケヤキ・クスノキ・イヌマキ・イチョウ・クロマツ等、また構内各所の花木・果樹・紅葉樹等がこのようにして移されたとみられます。また希少な草本類が生育する一帯は、表土がブロック状に剥ぎ取られて保管され、公園予定地に移設されました。
 跡地外周部で現地保全された樹木も85本あります。東側外周部のイチョウ並木・ソメイヨシノ・クルミ・ニッケイ・スモモ、南側のソメイヨシノ・ヤマモモ・アラカシ・マテバシイ、西側のソメイヨシノとサトザクラ(八重桜)の並木、北東・北西角のクスノキ等です。西側プール横の大桜は1本が現地に残されました(大枝をいくらか落とされています)。旧東門横のイチョウの根元にはジャコウアゲハの食草(餌)であるウマノスズクサが生育していますが、その一帯も残されているもようです(2017年9月現在、フェンスの向こうで現況が確認できません)。
 2014年7月に六本松公園が開園し、中庭桜の苗木が記念植樹されました。六本松公園には西側並木の桜が保全され、東側ロウバイ・同マルバアオダモ・新1号館中庭クスノキ・本館西サザンカ・本館南ノムラカエデ・2号館南ハナミズキ等が移植されたほか、上に記した草本表土の移設でカンサイタンポポ・ホタルブクロ・スズメノヒエ・ツルボ・タイリンアオイ・ノギク等が根付いています(2017年9月現在、ツルボ・タイリンアオイは地上に出ていず難しい状況です。スズメノヒエも今年度未確認です)。イヌノフグリの種子も播種されたと聞きますが、まだ発芽が見られません。公園横の弁護士会館予定地には草ヶ江小学校からアメリカデイゴが移植されています。なお中庭桜の苗木は西側大桜近くにも2本植えられています(一度更新されました)。草ヶ江公民館横の公園にも中庭桜の苗木が植樹されています。
 また、2017年春にMJR六本松がオープンし、その周囲の公開緑地への立ち入りができるようになりました。MJR南側の公開緑地は上に記したように六本松公園の北側に隣接していて、そこには1号館南キンモクセイ(のうちの1本)・本館正面左の大ケヤキ・同じくシュロ・国道沿いメタセコイア・2号館南メタセコイア・図書館東クスノキ・4号館南コブシなどの樹木が移植されています(2017年9月現在、このうち4号館南コブシが体調不良です)。MJR西側から北側にかけての公開緑地にもキャンパス樹木が一部移植され(新1号館ツバキなど)、北西角の広場にはもともとそこにあった大クスノキのほか、本館正面右の大ケヤキが移されてきています。
 正門入ってすぐにあったワシントンパームとソテツは残念ながら仮移植後に枯れたもようです。1号館南キンモクセイはMJRの公開緑地のほか跡地西側にも移植されましたが、その西側のものは枯れ、公園に移植されたハルニレも枯れたもようです。枯死した樹木の一部は同種の若木が代替植樹されていて、現在六本松公園にあるハルニレや西側のキンモクセイは代替植樹です。
 2016年の春、六本松公園と西側それぞれの中庭桜の2世に数輪の花が咲きました。
 
 これまで近隣の多くの方々から「○○の木をいつも見ている」「この木を残してほしい」というお話を伺いました。キャンパスの植物は地域の方々と深い「繋がり」を持っていました。残った植物はその繋がりを保ち、新しい花からは新しい繋がりも生まれることと思います。
 跡地に残った植物、新たに植えられた・生まれた植物が、六本松の「住民」、「お隣りさん」として、地域の方々や新たに六本松に根ざす方々と幸せな繋がりを紡いでいく「これから」を、願ってやみません。
 
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 六本松キャンパスの樹木に関しては、過去に「草ヶ江校区まちづくり協議会」と「六本松跡地を考える連絡会」がそれぞれワークショップで樹木調査と住民意見交換を行ったと伺っています。私のほうでも研究用植物の植栽や、草本類の分布について調査した資料を持っています。
 
 現在も、私は跡地外周から見える植物や六本松公園の植物を個人的に不定期に観察しています。目新しいことや季節折々のことを引き続きブログに載せていきたいと思っています。跡地内移植で場所を動かされた樹木の現在位置もこつこつ確認中です。跡地植物の観察や現況に関心がおありの方はお問い合わせください。
 また、旧キャンパス構内の木々や草花、その他の生き物についての思い出や情報などを集めています。お心当たりのある方は、いつの年代のことでも結構ですのでお聞かせください。
 
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桜の若木 中庭桜2世(六本松公園 2016年)
 

光安輝高
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